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■ メビウス リング クロスロード DEPARTURES・1
2006 / 02 / 09 ( Thu )
屋根裏に続く梯子を昇る。
上がりきった先に待ち構える窓から見える外の空は今にも雪が降り出しそうな鈍色だ。
板張りの床が軋む音が響いて消える。

息が白い。空気が冷たい。ものを触るごとに奪われるような指先の温度。
そこかしこに転がる物は今はあまり使われなくなった物と言う事だ。
でも、いつか必要になるかもしれない物。
ぼくの記憶に新しいはずのそれらには、埃が降り積もっていて、確実に時間の経過を物語っていた。

帰るところを失くしたハズのぼくらをウィンリやばっちゃんはいつも温かくむかえてくれていたのだろう。
家を焼いてしまってからは、尚の事、ばっちゃんは僅かに残った僕らの思い出の品を大事に取っておいてくれたようで
そして、それはこの4年間も同じ事。

ぼくの記憶にない、ぼく(?)と兄さんの写った写真。
ぼくの知らない兄さんの品。

金髪のきれいなお姉さんから受け取った、ぼくと兄さんの4年間を綴った手帳と紅いコート。

コートのサイズに関しては思うトコロもあるのだけれど、
それらは確実にぼくと兄さんの4年間があったと言う証。
兄さんがいたと言う証拠。


だけど、今、兄さんがいる証明にはならない。


奥の戸棚から目的の物を見つけて抜き取る。
ここだけはぼくが何度も扱うので、埃が徐々に払われている。


再び、シンと震える透明な空気の中に床板の音を溶けこませて階下に下りる。
ウィンリや皆がいて、暖炉の灯った、暖かい場所へと。


だけど、その輪に、兄さんはいない。



・◆・◆・◆――――――――――――



電話台の上に飾られた二人の写真
私も含めて河原で魚釣りをしていた時のものと記憶しているけれど、
エドとアルしか写っていないあの写真がよくも私の家にあったものだ。
特に二人が旅に必要な最小限の物だけを持ち出して、思い出と共にあの家を焼いてしまった後にはそれを幸いに思っていた。
けれど、この半年、私はあの写真立てを伏せては起こしてをバカみたいに繰り返している。

そしてその写真立ての上後方のボードには、幼馴染の家族が4人揃ってる写真も、無数の請求書や領収書、別の写真とともに貼られている。
二人の父親の顔は今も別の写真で隠れたままだ。
子供の背には高い位置にあるそれを、椅子を持ち出し、尚、その上で背と手足を精一杯伸ばしてアルが捲っていたのはもう随分と昔のこと。
兄に見つかっては機嫌が悪くなるのもわかっているから、周囲に十分気をつけての行動だか、椅子まで持ち出していてはとっさにごまかすのは難しい。

私の両親が死んでからは、私もアルのその姿は見ていない。

今のアルの背丈はもう踏み台を必要とせず、さりげなく写真を捲れるくらいには伸びている。
けれど、一つしか違わなかったハズの幼馴染は、私よりずっと幼い。
やはり、その年下の子に気を使わせているのだろうなと思う。

明日はラースの機械鎧の手術をする。
本来、エドの為に準備しておいた機械鎧。
この事に関して、アルが何も言わないのは、エドが機械鎧を着けていた実感がないからではないと思う。
そして、何より、
このごに及んで、あまり踏ん切りになりそうもないのを、エドにもアルにも、そして何よりラースに申し訳なく思う。


ねぇ、エド、
あんたが元の身体に戻るまで、わたしがサポートすると言ったあの日から、
あなたと共に私はあるわ、 私と共にあなたは無いけれど。



・◆・◆・◆――――――――――――



その、二年後



・◆・◆・◆――――――――――――



押し込められたベットの上から、首もとを遡上し額に触れ、前髪を掻き下ろすアルフォンスの温かく柔らかい指。
眼を閉じて意識を集中させる。
アルフォンスの蒼い瞳を見れないのは惜しいと思うが、それ以上に顔を見てしまっては決心がにぶる。
だから声だけを聞く。
多分、オレの知るアルが成長していても、そうはならないだろう、アルフォンスの声。

「そう言えば、オレ、アルフォンスの事あまり知らないな
 話せよ、アルフォンスの事、そうすれば、オレもあっちの世界の事、話してやるからさ 等価交換ってヤツだ」

―――――――確認する、これは儀式だ。

「えーと、 アルフォンス・ハイデリヒ 16歳。 生まれも育ちもドイツです。 
ルーマニアでオーベルトさんの師事を仰いだ後、 今はミュンヘンでエドワードさんと暮らしながら、ロケット開発をしてます。」

―――――――ほら、違う。

「家は中流階級の真ん中よりちょっと上くらいだったかな、
 11歳の時に両親が早逝して、 6つ年上の姉に育てられたよなものです。
 その姉も今年の春、結婚してぼくも肩の荷がおりました。」

―――――――違うだろ、   だからきっと、大丈夫。

わかってるから、アルフォンスとお前が違うって。
わかった上での覚悟なんだから、赦してくれよ、アル。








「オレ、 ロケット作りやめても、ココにいていいか……」

―――――――審判を、 断罪を、 慈悲を、 安息を。

オレ達は共犯者で、 アルフォンスは真っ白なんだ。 どうやったて染まらないよ。





「相当、重症のようですね。 すこし頭を冷やした方がいいですよ。」



・◆・◆・◆――――――――――――



涙でにじむ夕日がとても赤かった。
長く伸びた影が、あなたの言葉と共に届いたの。
小さなあなたが言った、私の中で大きな言葉。

「立って歩け、 前へすすめ、 自分で考えろ。」

ねぇ エド 
神様はいなくても、
あなたの足がどこかで進んでる事を祈るのはすがるとは言わないはずよ。



・◆・◆・◆――――――――――――



汝、おさなき人、いささかなる功徳を翁つくりけるによりて、汝が助けにとて片時のほどとて下ししを、
そこらの年頃、そこらの金(こがね)たまいて、身をかえたりがごとなりにたり。
かぐや姫は、罪をつくりたまえりければ、かく賤しきおのれがもとに、しばしばおわしつるなり。
罪の限り果てぬれば、かく迎うるを翁は泣き歎く、能わぬ事なり。はや出したてまつれ



・◆・◆・◆――――――――――――



ぼくの見る絵で、その人は窓の側にいる事が多かった。
今も蒼白い月光下で何かを探すように、ぼんやりと上を見上げてる。

ぼくの見る光景で、気がつけば彼は窓の傍にいた。
今日も蒼白く反射する雪と月の光を頼りに、何かを待つ風情で、ぼんやりと宇宙(そら)を見上げてる。


感覚のない右肩をガラスに乗せて、外気だけは感じないように。
時々、左指だけが硝子に写った姿をなぞり、縫いとめる。

誰より外に出たがっているクセに。
お願いだから、側に来て。

まるで鳥籠の鳥を愛でてる気分だ。
お願いです、傍にいて。

孵らないで、孵って、帰らないで、帰って、還らないで、還って。

翼を捥いだのはぼくです。
あなたの為だと思ってました。
それでも飛べと言うのは、残酷でしょうね。
ただ、ぼくの罪を無かった事にしたいからではありません。
これだけは、本当。

堕ちたのは多分、ぼくのせいです。
ぼくは、ぼくの幸せの為にあの人の幸せを願いました。
あの人は、あの人の幸せの為にぼくの幸せにそれだけの価値をかけただけです。
だからぼく達は同罪のはずです。
罰は等しく―――それだけは、真実。


あれだけ、人の気配に感覚が研ぎ澄まされた人が今だこちらに気づかず天をあおいだまま。
衰える感覚――月と太陽はそれ程に何度も交代劇を繰りかえしたのです。

それは、ぼくに気を許してる証なの?
ぼくとこの人が同じモノからできてるから?
大気のようにこの星を外界から包み守る存在ですか?

それは、ぼくなんか、この世界ごと、存在しないと言ってる証明ですか?
もう、ぼくを見ることはしないから?
空気のように必要としてるだけですか?


そこにはいないよ、ココにいる。  こっちを向いて?


願いが届いたのか、その人はこちらに気づいて

「よう、おかえり」

と、笑ったつもりで瞳をとじた顔で言う。 

おかえりは違うと思う。

ごめんさい、やっぱり宇宙(そら)を見ててください。


その微笑に感じた胸の痛みは、そのまま捻挫した右手にも伝播した。



・◆・◆・◆――――――――――――



―――――――――それはまだ兄さんが空を見ていた頃の風景

その日は、ロケットを打ち上げるのに最高の天候だとかで、
小高い丘の上まで機材をいろいろ運んで、あいかわらず、ちっとも重たいとかは思わなかったけど、
だだっ広い空につけたヘンテコなモノのシミがどんどん小さくなっているのにザワザワした。

そのドキドキに値する位に実験は成功らしく、隣で兄さんも嬉しそうだったので
眼下に見える赤い屋根の町並みと森がまだ、こんなに広がってるのに、空まで侵して何を求めるんだろうって思ったけれど黙ってる事にした。
ぼくも領域を侵した身で何か言える立場じゃないけど、それでも兄さんに会いたいのは確かだし、兄さんもきっと懲りてないんだろう。


そうだね、俯いてるよりは、上を見てる方が兄さんらしいよ。



それから浮かれて、はしゃいでいたせいか時間の経過は曖昧で、気が付けばぼくと兄さんは月夜の中にいた。
その夜の闇を引き連れて、それすらも内包して輝く様は満月でもなくても人を狂わすのに十分なのにと思った。
河原からせせらぎの音と涼しい風が上がってきてるハズなのだが、後者は視覚でしか認識できない。

「宇宙に出れば、別世界にだって繋がると思うんだ」

これが兄さんが帰ってくる方法?
希望に満ちた、誇らしげな顔は、母さんを錬成する直前まで見ていたあの日の顔。

大きな月と風になびく金糸の境が曖昧で、溶け込みそうな兄さんの手を
そっちじゃないと、ぼくは慌てて引き戻そうとしたけれど
兄さんは踵を返して、先に歩きはじめてしまった。

そうだね、いつもぼくの前を行くのが、兄さんだ。

だけどどこか、届かなかった手が、空を切った手が、取り残されたように淋しかったのを覚えてる。

仕方が無いので、その辺のちっぽけな変哲のない石を拾って川に投げ込んでみた。
それを見ていた兄さんが戻ってきて、「平べったい石の方がよく跳ねるぞ」と無邪気に笑って投げたら三度水面を切った。
「知ってますよ、それくらい」兄さんに対するにはぼくらしからぬ言葉遣いだけど、ムキになってぼくがもう一度投げたら四度水面を切った。
それから暫らく二人で飛ばし合いをしていた。



・◆・◆・◆――――――――――――



向こう岸には届かなかったなぁ


ずいぶんと昔の夢をみたような気がしたが、ベットから抜ける頃には、
夢を見た気になったのではなく、そんなに昔のような話でもなかったのだと思い至った。

正直、自分自身の気持ちですら持て余してる状況だ。
結局、どうしたいのだ、エドワードさんも、ぼくも。
矛盾だらけの希望に計算高くなる隙もない。
現実みのない欲望に限界なんかじゃないって目を瞑る姿に得るものは何?
貴方となら夢(そら)はきっと掴めると言う思いに今も偽りはないのに。


だから、あんな気休めにもならない事を自覚がありながら意地悪く言い出したのは
単に、どうしようもなくなった道をいっその事、第三者に打破して貰いたかったのかもしれない。

「ねぇ、エドワードさん、
 ぼく、思ったんですけど、あちらから――― 弟さんの方から迎えにくるって可能性はないんですか?」

カシャリ と陶器の割れる音が響いた。
朝食後に食器洗いをしていたエドワードさんの手が止まる。
外は相変わらず雪景色で、ぼくは温かいコーヒーを飲みながら、新聞で顔を隠して何かのついでの様に言った。
よくぞココまで卑怯になれたモノだ。なんだってできるという可能性の間違った使用法。

やはり、触れてはいけない事だったのだろう。
呆然自失のエドワードさんに、また内に篭られる羽目になるのだろうかと危惧したが、
(ある意味、それも自分の独占欲を安心感にすり替えられるので狙ってもいたかもしれない)
当のエドワードさんは予想に反して、鳩が豆鉄砲くらったような顔をしていた。
どうやら、そう言う考えを一度も持った事がなさそうだ。
それとも、ぼくが彼の言う世界を肯定したような言い方をしたからだろうか?

「そうだな、オレはソレを望まない。
 うん、コレだけははっきり言える。オレは望んでないよ。」

久しぶりに見る、エドワードさんの意思の強い黄金の瞳。 ぼくに新聞を下げさせ、魅入らせるには十分だ。
その顔に希望を見出しこそすれ、そんな顔をさせるのは畢竟、弟なのだと打ちのめされる自分は、自分で仕掛けておきながら大概バカだ。
当然だが、食器を割った事を謝り、処理するよりも最優先事項。
それで、どうして諦めるなんて言えるのか。

「だったら、尚のこと――」
「わりぃ、皿割った。」
タオルで拭き終わった手と、言葉でぼくを制して、この話題はコレで終わりと言う。
ぼくも卑劣だが、彼も卑怯だ。

腰を下ろしたエドワードさんを見下ろすポジションに耐え切れなくて、ぼくも新聞を広げて、皿の破片を拾うのを手伝う。

唐突にエドワードさんがぼくの額に自分の額を預けてきた。
予想外の行動で、様になるハズもなく、多少反動がついたトコロで抗議する。
「痛タッ、いきなり何するんですか? エドワードさん」
離れようとしたところで、エドワードさんの左手がぼくの後頭部に回され再び額が触れる。

「アルフォンス、熱ないか?」
「どうしたんです? 自己申告とはめずらしい」
「そうじゃなくて、お前が! だよ」
「単に、右手のが熱もっちゃってるだけですよ。」

でなきゃ、きっと知恵熱ですよ。 
本来ぼくはこんな駆け引きまがいの事する性格じゃなかったんですから。慣れてないんです。
気づきたくもない感情を引き摺り出したのは貴方だと、そう思えないからやっかいなんじゃないですか!

一方、エドワードさんは、「変な事言い出したかと思ったら、熱のせいか…」なんて一人ゴチてる。
ほんとうに分ってない人で、何より、あなたにとって“変な事”のレベルではないのでしょう?
本当にムカついて、ムカついて、咳こんだ。 あれ?

エドワードさんはあわてて背中をさすってくれたけど、咳が笑いに変わるのにそう時間はかからなかった。
「ッちょ、や...め、くすぐったいっ エドワードさん...ッ」
意外に背中弱かったみたいです。 はじめて知りました自分。
そんな事をしみじみ自覚してたら、背中に一本、人指し指で線を反られて、トドメをさされた。

「…ヒ…ャ………ッ!」

声にならなくて、ゾワゾワする。
あなた、ついさっき、ぼくを病人に認定しませんでしたか?

「なんだ、元気じゃないか」
あまりの仕打ちに睨み付けようとしたら、エドワードさんは至極満悦そうな顔だ。

「意外な弱点はっけ~ん」
ニヤついてるそんな顔が見たかったワケでもないんですが…… だからぼくも言ってやった。

「ああ、確かにエドワードさんがぼくの背後につく事は滅多にありませんものね。前が見えないから。
 負ぶられるのも嫌がるし。 そりゃ、今まで気付きませんよね。」
この際、自分も今気付いた事は棚にあげておく。
彼に身長の事を言えば、大抵、仮初めでも浮上するを承知の上でだ。

「それは違うぞ、アルフォンス・ハイデリヒ 年長者は常に先を行くものだよ。」
常とは違う、余裕ありげな対応に違和感を感じつつも、目的は達したようで、
一つだけでも確かな思い(解)を得たのが、それなりの拠り所にもなったのだろう。
その拠り所が弟に関連するのが気に入らないが。

「年上なら、年上らしく、落ち着いた行動を取って頂きたいものですねぇ」
「落ち着いた行動?」
「頭突きとか、 手で測ったっていいでしょう。エドワードさんと違って駄々っ子の様に逃げたりしませんよ。」
「駄々っ……」
言葉につまるあたり、自覚はあるらしい、良い事だ。
「お前なぁ、オレ、今まで洗いものしてて手ぇ冷えてたんだぞ、右手は感覚ねぇし」
んー? それは、オーベルトさん呼んじゃった時のぼくの失態を言ってるのかなぁと思ってたら、どうやら声に出てしまってたようで
「そうか、そうか、そんな事があったのか」
うっわー なんだかいろいろな事に腹立ってきた。
そして、言ってるそばから、エドワードさんは三度、額をよせてきた。
今度は優しく、両手でぼくの頭を包み込むように。
目をとじて触れる部分に意識を集中させるかのように。
そんな事されては怒りもそう持続しない。ぼくも目をつぶる。

「おまえ、やっぱり熱あるだろ、 ひがみっぽくなってるぞ。」
「なんですか、普段やられてるコトの仕返しですか?」
あれ? なんか本当に僻みっぽい? ぼく? 熱もあるような気がしてきた。

「ってか、なんでエドワードさんは嬉しそうなんですか…」
彼が人の不幸に喜ぶ性質ではないのは明白だ。
逆に、右手首を捻挫した時だって、彼の方が悲痛な顔をしていて、その時はそんな顔に「痛い」なんて言えるわけがなかった。(後で散々利用したけど…)
そこに思い至らない彼にずるい人だと思いつつ、全ての事を我が物の様に抱え込もうとする姿の支えになりたいと思った。
そして強欲で傲慢だ。彼は自分の手が小さく僅かなものしか掴めないのを承知してこの世界を切り捨ててきたのではなかったか?

「なんだか、久しぶりに優位にたてた気がするから。」

今にして思えば、エドワードさんの懐柔法はここにあったのだろうなと思う。
たぶん、ぼくは彼の人に頭を垂れることの無い気質の本質を履き違えていたのだ。
しかしそれこそ、ぼくにとっては気づいたところで引き返す事はできなかったのだけれど。

「捻挫の件でコキ使ったの実は怒ってます?」
側頭部を包んでいた両手が輪郭をなぞるように下へ下ろされ頬でとまる。
食器洗いの途中で、シャツを捲くったままの腕が視界に入る。
おもむろに親指と人差し指で頬を挟まれて左右に引き伸ばされる。

「ばーか、そんなんじゃないよ」

まっすぐにぼくを見る瞳。
嘘つきな彼は、嘘をつくとき程、相手の目を見ていた方が効果的なのを熟知している。
ただ、ぼくに対してだけは誠実で、彼が彼の真実を語る時ほどぼくの瞳を見ようとしない事に最近気がついた。
だけど今のは?

エドワードさんの中で何かが変わってきてるような予感がした。

ゴーン…ゴーン…
夏の甲高い音とはちがい、鈍色の雲に相応しく重厚な鐘の音。
外はまだ暗いと言うのに、市庁舎の時計塔が8時を知らせる鐘を打つ。

「あ、時間だ」

あわてて立ち上がってみたものの、白い陶器の破片はちらばったまま新聞の上に回収されずに残ってる。
エドワードさんは手で払って、先に行けという。
「すみません」と謝って、一旦、自室に戻り上着を羽織って出ると、玄関先でエドワードさんがマフラーとハンチング帽を持って待っててくれた。
エドワードさんは頑張って、帽子をかぶせてくれたけど、なんだか前に目深だ。
くすくす笑いながら自分でマフラーを巻いていたら、エドワードさんが言った。

「ひどくなったら、早めに帰ってくるか、病院行けよ」
「そうですね、体調管理についてエドワードさんにだけは言われたくないですから」

そう言ったら背中を叩いて送りだされた。



そして、ぼくらは、日常を繰り返す。



・◆・◆・◆――――――――――――



月の宮この人にて父母あり。かた時の間とて、かの国よりもうでしかども、
かくこの国にはあまたの年をへぬるになん有ける。
かの国の父母のことも覚えず、ここには、かく久しく遊びきこえて ならいたてまつれり。
いみじからん心地もせず、悲しくのみある。されどおのが心ならず、まかりなんとする














to be continued




          


            Next: メビウス リング クロスロード DEPARTURES・2






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