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■ メビウス リング クロスロード DEPARTURES・3
2004 / 03 / 14 ( Sun )
アルフォンスの出立の日、
オレはアルフォンスの大きめなカーディガンをぶかぶかと着せられて、隣にはグレイシアさんがいた。
駅まで送るつもりだったのに、アパートの戸口で押し留められた。

「それじゃ、グレイシアさん、エドワードさんの事、よろしくお願いします。」

そう言ってアルフォンスが出かけようとする先は、寒の戻りと評するにも甘い大雪で
あとは春になるのを待つばかりと期待していた人々の油断をあざわらうかのようだった。

この二週間、休みを取る為に詰め気味のスケジュール調整となったアルフォンスの仕事を手伝い
少しでも早く、長く家族の元へいさせてやりたいと思いながら
どこかでアルフォンスが出て行くのを怖れている自分がいた。

何の憂いもなくアルフォンスを送り出そうとしながらも
結局、その矛盾に身体の方が正直に訴えに出たのだ。

出立前夜に起した例の発作は気づかれる事はなかったが、
朝、少し血の気の引いた顔を見合わせれば当然の如く、アルフォンスには気づかれる。
自分が着ていた濃紺のカーディガンを羽織らせるとアルフォンスはグレイシアさんを呼びに行き、
完全看護の態勢をしいた。
「大げさだ」と抗議してみせるオレの傍らで、今度ばかりはアルフォンスを引きとめられないと観念する自分がいる。
今回の休みをとる為にどれだけの苦労があったかを知っていれば尚更だ。
だが、なぜ今更、ソレを選ぶのだと、アドヴェントの頃、賭けに勝ったつもりだったオレはお門違いにも恨みがましい。
久しぶりに帰郷するにはアルフォンスの顔は期待にみちておらず、オレに見せるのは気遣わしげな表情だ。
まるで母の気を引きたい子供じみた反応が自分自身で情けなくも腹立たしい。


自分はこんなにも、自制心に欠いた人間だっただろうか?
否、そんなモノを持ち合わせていたら、初めから母親の蘇生など求めなかったハズだと思えば
オレはあの頃から何一つ変らない、我を押し通そうとする世界の中心が自分な我侭な子供なのだ。


何もかもが中途半端なごまかしだ。
それでも
アルフォンスはオレを置いて家族の元へ帰るのだ。
―――――この大雪ですら、アルフォンスを足止めしたいオレの味方になる事はなく―――――



・◆・◆・◆――――――――――――



水35ℓ 炭素20㎏ アンモニア4ℓ 石灰1.5㎏ リン800g 塩分250g 硝石100g イオウ80g フッ素7.5g 鉄5g ケイ素3g

崩れ落ちる書籍、舞い散る紙片
バサバサと放り上げられては、雪の光を吸収して静かに落ちるのを繰り返す。

窓枠で仕切られた外が白く雪で埋もれていると言うのなら
この室内は、白き紙に書き写された知識で埋め尽くされていた。
だが、どれも一心不乱に探し物を求めて蠢く影の主には用をなさない紙切れなのだろう。
かきわけられても、振り向かれないそれらは、まるで自らの整理された知識をかき乱すのと同じ行為に見える。

ない、ない、ない、ない    どこにもない
オレじゃダメなんだ
どこまで行っても、オレはオレでしかなく
オレはココなのだ。

付随して降り上がる塵埃が濡れたコートの裾を、細い金糸を、汚していくままにまかせている。
高く積み上げれた本たちがなぎ倒され、粉塵だけが嘲笑うかの如くふわりと浮く。

座標軸 数式 法則 幾何学的な円の紋様

「全ての起点はお前のハズだ!!!  
テオフラストゥス・フィリップス・アウレオールス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイム!

激情から一転、そう発っしたきり崩れ落ちるエドワード。
引き裂かれた寝具から零れたであろう純白の羽が外の雪と同じように
静かに横たわるエドワードに降りそそぐ。

硼素 フッ素 珪素 ヴァナジウム クロム モリブデン コバルト ニッケル 銅 砒素 セレン マンガン スズ ヨウ素 亜鉛
――――おぼろげな眼鏡をかけた金髪の紳士の姿

浮かんでは消えていく思考の断片は理解するには系統立たず、本人にすらソレが叶っているのか疑わしい

理解 分解 どこまでも切り刻まれて細分化される組織片、貪欲に解き明かすのを求める思考 ――――そして、再構築 

何よりも狂乱じみた荒々しい先ほどの行動より、
手も足も髪一筋、魂すらも一度バラバラに分解され、別の地点で結合する物体を扱うような無機質なイメージにぞわりと身が震えた。

やがて、身を折ってくつくつと笑いだしたエドワードの表情は乱れた髪で隠れたままだ。

「オレも大概ヒドイだろ? このごに及んでアンタを父親として必要としないんだ」

無論、他に人の気配が無いこの家で、返ってくる言葉などない。
エドワードの頭の中で紐解かれる錬金術史   そして結論  世界の分岐路

「だけどさ、お互い様だろ? アンタが最後に選んだのは目の前にいた子供(オレ)じゃないんだから。」

爛れた皮膚 栗毛色の長い髪 日々きつくなる香水の香り やわらかな微笑 
朽ちるにまかせ、手を講じようとしない背をみるだけのもどかしさ
――――「トリシャの愛してくれた、この顔形で……」
なのに、自分には生きろと言う。

ただ一つ、父親が残したモノは仮初めの希望

「アンタは初めから知ってたんじゃないのか? あんな方法じゃ帰れないと」

やさしい顔でウソをつく人達。
絶望の鍵を握りながら、それを隠して、別の扉を指し示す
生かす為の避難路も、賢い彼にとっては回り道をしいられた迷路にすぎず
幾度かの迂回の果てに、また絶望の淵へと辿り着く
人生における時間かせぎにしては、短かすぎておそまつだ。

否、エドワードとて、初めからわかっていたのだ。
宇宙に出ても帰れないコトなど。
奇しくもそれはアルフォンス・ハイデリヒと出逢った事で証明されたのだと言う事も。

似て否なる存在

それはとりもなおさず、この世界がエドワードの言う錬金術世界とは
別の星としてどこかに存在するもう一つの地球などではありえない事を物語っていた。

別の次元 別の位相

そんな所へは、いくらこの世界の天上の延長線を求めても辿りつけるハズがない。

では、なぜ?
なぜ エドワードはそのまま研究を続けたの?


「あぁ、錬金術バカなのは、確かに血が繋がっているのかもな」

少し態勢をそらし、天井を仰ぎみるエドワード。
先刻の息をきらして荒れ狂う上気した顔が嘘の様に、少し病的な白さを有しているのは
外界が雪に閉ざされているからだけではないはずだ。


手についた白い泡沫
カサリと紙をめくる音
カチャリと食器の割れる響き

―――あちらの世界から、弟さんが向かえにくるって可能性は―――


「アルフォンス…… お前、自分がどれだけ危ない事を口走ったかわかってんのかぁ……」

アルフォンスに初めて会い、その姿を見た時
―――ああ、こんなトコロに在ったのか。  と思いはしなかったか?
どうりでドコを探しても見つからなかったハズだと、酷く合点がいったのだ。


青いバラ
老いた花
良くも、悪くも普遍の人形
さまよえる女の、男の魂

あれほどに探し求めたアルの魂の器
そして錬金術を使えない自分。
世界は美しくも整合している。


赤い空
砂に閉ざされる道
一瞬にして廃墟と化した妄執の街
終焉の幕となる西陽

「兄さん、今、何を考えてる」
「オレ達はその一歩だけは間違えない。 自分達の為に他の誰かを犠牲にしたりしない」

―――わっかんないぜ、今のオレなら。

おびえる囚人
七つの紅い支柱
金属を削る耳障りな音

「軍の狗と罵られてもかまわない」
「どんな手をつかっても…」
「兄さんやめて、    その人達は人間なんだよ!」

なぜ、ああも強く在れたのか
それはアルがー弟が、常に傍らにいたからに他ならない
結局、あの後、グリードに、母さん……スロウスを手にかけ
直接ではないにしろ、リオールに関わった人々、そしてヒューズさん。
本当に今更なのだ。

―――頼むから――オレがこれ以上、罪を犯す前に――――――アルフォンス。










パタリと扉の閉まる音がする。

「おまたせ、ノーア」

名を呼ばれて我に返る。
気がつけば周りの雪は消え、少し肌寒い風が吹いているだけ。
石畳の上を紅く染まった葉がカサカサと音を立てて転がっている。
天上はかろうじて空は青いのだと思わせる色。

こんな事は初めてだった。
千里眼と呼ばれる私の力は人に触れてこそ覗き見れるものだったのに
一方的に流れこんでくる強い思念。 引きづられる程の切実な想い。

「ひょっとして、ここ、エドワードの…」

目線の先は今も冷たく佇む壁一枚向うの過去。
ふいに足元の質感を確かめたくなる。

「うん、たまに様子を見にきてるんだけどね。 帰ってきてる気配はないね。
 ―――聞いてるよね? エドワードさんのお父さんの事。」

「少しだけ」

「……本人は寄り付きもしないんだけどね。」

燃え盛る炎
自らの帰る場所を焼き捨てた子供
傍らには私よりも異質な鎧
逆光の中、鞄を手に出でいく大きな背
別の家での再会

ココはエドワードの帰る家でもなければ
この家に、もう誰も帰ってこない事など皆が知っている場所。

それでも、 ―――もう一度、自分の勝手で帰る場所を奪ってしまう事への怖れ。

ただ、それだけの為に取り残された場所。

きっと、そんな事はアルフォンスにだってわかっている。


市場で買い求めた食材のつまった紙袋を私から受取り歩き出そうとするアルフォンスに問いかける。

「どうして、アルフォンスはエドワードと暮らしているの?」

振り返った青い瞳の青年の表情は穏やかで、
彼が隠してる事実を思えば、なぜそんな顔ができるのか。
自殺行為にすら近い行動を取り続ける彼に何を言っても止られないのはわかってた。
彼が自身を活かす為には、皮肉な事に彼の命を捧げるしかないと言う矛盾。

彼がそんな行動に出た決定的な理由が私に起因したのだと認めるのが怖ろしかっただけかもしれない。
触れれば、ごまかしのきかない私に対して、それでも言葉として嘘をついて欲しかったのだ。
そうすれば、私とてこれ以上、覗く理由がないのだから。
だけど、アルフォンスからの答えは無い。

「だって、エドワードはあなたの事!」

 ――――――――――――――――――――――エドワードの切なる想い。

「あのね、エドワードは………」

「……本当に   …貴方だって……」

アルフォンスに伝えておきたいのに言葉が繋がらない。
背後で過去からくる金の瞳の男から口止めされているような気すらする。

この力を生業に使うようになってから、相手の感情にまで同調しない術は身に付けたつもりだった。
だが、所詮、占いなんて不確かなモノに遊興として金と時間をついやせるお気楽者が相手だっただけなのだ。
エドワードが心の底から願っていた事は私の中にもあるモノだからこそ、響き、反響し、共鳴していく。
同情や感情移入なんていう生易しいレベルではなく、支配されそな錯覚を起すほど、暴かれ、重なり、増幅する。
久しぶりに自分の感情が顕になるも二重に戸惑いながら

「………アルフォンス、あの…」

エドワードの焦りと空回りそのままに、矢継早やに、けれど意味をなさない言葉。
アルフォンスは一方的に、感情だけが昂ぶっていき、泣き出しそうになる私に少し驚きつつも
困惑顔を見せるわけでもなく、分かってるから無理に言葉にしなくてもいいと言わんばかりに微笑で返してくれるのだ。
この人はきっと、私なんかより、ずっと人の気持ちに聡いのだ。

エドワードがこの家にこれだけの想いを残しながら、
今までの共同生活の中では私に感じさせなかったのは何を意味するのか。





「ひとつ、ずうずうしいお願いをしてもいいかな」

今度はアルフォンスが私の返事を待たずに言葉を続ける。


「君が自分の身の振り方を決めるまででいいから、
 エドワードさんの傍にいてあげてくれるかな。」

「私にエドワードの面倒を見ろと言うの?」

「ちがうよ、多分、エドワードさんが、君の世話を焼くんだよ。
 彼は、良くも、悪くも“兄”と言う生き物だから」

私の誤解を思ってか、その姿を思い描いてか、アルフォンスは少し苦笑した。



「人はね、一人では生きてはいけないんだよ。 ノーア。」


木枯らしが吹いて足元の落ち葉が二枚、重なりながら競うように舞い上がる。
――――落ち葉  一度、地に落ちたものの飛翔。

「風が強くなってきたね。 帰ろう、 ノーア。」
そう言って、アルフォンスは躊躇いなく私に手をさしのべてくる。

この二人は、私の能力を知っていながら、私に触れる事に警戒しない。
こんなにも、隠したい、騙していたい想いを秘めながら、その対象はお互い限っての事だからなのか
むしろ、私を通して伝えて欲しいのか。
否、一人で抱え込むには重すぎて、
無かった事にはしてしまうには、いと惜しすぎて
誰にも知られず、忘れらてしまうには、淋しすぎて、
それでも曝け出すわけにはいかなくて、はけ口として私を利用してるだけなのか。








・◆・◆・◆――――――――――――



その、約半年前



・◆・◆・◆――――――――――――


しんしんと降り積もる雪の中、プラットホームの一番端に立っていた。
イースターを目前にやはりもう一降りあったかと、わかってはいるのだが毎年裏切られる春への期待を
もう一度胸にしまいこんで、皆、しかたなく日々繰り返してきた冬の作業をこなしている。
線路の雪をかきわけるのは勿論、溶けかけの雪が再び冷えて生えたつららも落とさねばならない。
鉄のレールが寒さで縮みすぎたり、分岐器の稼動部が凍結して転換不良を起さぬよう、軌条下のカンテラに火を入れていく。
この大雪で予定が狂った人々で構内は常より一層、喧騒につつまれているのに対して
ここまでくると静かで、わざわざこんな端にいる自分は否でも応でも物思いにふけりたかったのだと自覚させられる。

エドワードさんにこの上ない愚問をしたあの日、
体調の安定しないエドワードさんに続き、自分までも倒れたりするわけにもいかなければ、
本当にエドワードさんに体調管理をとやかく言われては、エドワードさんを嗜めるわけにもいかなくなるので病院へ行った。

得たものは切り札にもならない不必要なジョーカー。

医者はぼくの仕事を訊き、今すぐ辞めろとすら言ってきた。
ロケット燃料に含まれる大量の有毒ガス。
皮肉にも、ぼくの夢がぼくの体を蝕んだのだ。

エドワードさんがロケットを開発したい理由を訊いた時。
エドワードさんがロケット工学を辞めると言い出した時。
不安と安堵と矛盾。
自分の中の汚さを見せつけられた。
この上、ロケット開発はぼくの命すら奪っていこうというのか!

目の前の線路は二本の平行線を幾重にも重ね、それぞれの長い道が限りなく降り積もった雪の先に消えている。

ボクの選んだ道は間違っていたのだろうか?
伏せりがちだったボクにアレは広い世界への扉であり、
無限に広がる未知なる物は、可能性への希望だった。
このままの計算で行けば、ボクの人生の大半を捧げた研究だ。
――――そして何より、ロケット開発がぼくらを引き合わせたのもまた事実なのだ。


元々、気管支系が弱く病弱だった為に、今回も風邪が何かその類だろうと思っていた。
それ故の発見の遅れに加え、若さ故に病状の進行も早いのだと。
「2年となると保証できない」とも言われた。

エドワードさんと出逢って約2年。
それと同じだけの時間で、彼に何を残してあげられるのだろう。

今回、エドワードさんを一緒に連れて行くと言う選択肢はなかった。
姉に話す内容が内容だけに万が一にも聞かれるのを怖れたのだ。

慣れてもらわなければ、困るのだ。
ぼくがいないこと、
人は一人では生きてはいけないことに。

人に馴染もうとしなくなった彼を、お高くとまってるとか評する人間もいたが、
自分を中心に世界が回っているわけではなく、
むしろその逆なのを痛い程に痛感して打ちのめされてきたのではないか。
ぼくが、彼の言う向うの世界を認めるかのような発言をする度に見せる複雑そうな顔。
彼の言う世界が現実にあるかは今だ半信半疑だが、
少なくとも彼の中には彼の世界が存在するのはぼくにはどうしようも無い事だ。

かつて、ぼくは彼の人の安息の地であればよいと願った事もあった。
だが、しかし、
彼の定めた最大の禁忌は、この世界で居場所を得てしまうこと。
最大の恐怖は、この世界に取り込まれてしまうこと。
と、同時に
最大の危険は、彼が疎外された世界で一人で立たなければと思いこんでいる点だ。
この世界を受け入れないかわりに一人でいる事で彼は等価として成立させようとしているのだ。

彼の話に聞く、早く大人にならなければならなかった環境を思えば無理もない事かもしれない。
そう言う人間が身近にも一人いたのだと思い出す。

幼い頃、姉と仲がよかったかと言うと実はそうでもない。
両親の両方にとっても初孫だった姉は周囲の愛情を独占していた。
そこに寝こみがちで両親の手を煩わせる自分の存在は面白くなかっただろうに、
年が離れていた事と、淑女然として育てられた事が幸いしてか表だって衝突した記憶などない。
伏せた時には寝付くまで本を読んで貰っていた覚えだってある。
お互いが気をつかって“良い子”を演じてる。 そんな距離のある関係だった。
それが一転したのは両親が早世した時からだ。
蝶よ華よと育てられ、絵に描いたようにたおやかな気質の姉が失意にくれる傍らで
ぼくが守らねば決意を固めた先に、どこにそんな素養があったのかと気丈にも立ち直った。
ぼくが姉を支えたのではなく、ぼくを支える事で姉は立つ事ができたのだ。
その頼りなかった背が張詰める姿に、芯の強さに、唐突にこの人はぼくの姉なのだと実感した。
その姉も、ぼく以外にも、愛され、愛すべき存在を得た。
姉はもうぼくがいなくても大丈夫だろう。
それが今のぼくにとって唯一の救いであり、世界の整合を美しいと感じさせた。

それを思えば、エドワードさんを立たせる方法など簡単で、甘えてみせればよかったのだ。
彼はきっと先陣をきって邪魔な雪を払い、地をならして征くだろう。
だけど、ぼくはどうしてもそのポジションにおさまる事ができなかった。

一人で立とうとするのは、それは立派に見えて、実はとても寂しい事ではないだろうか。

今はまだ、なんとか一人で立とうと足掻くエドワードさんの姿が尊く、愛おしい。
だが、確信がある。
きっと、ボクが死んで、彼が一人残されれば、彼はそれすらも諦めてしまうだろう。
この世界で彼が必要とするものなんて他にないのだから。
さもなければ、ボクがあの家に帰った時には姿を消しているかもしれない。

「イースターまでには帰ってきますから」と何度も念を押しながら
その約束が彼の為になされたモノではなく
帰った時にエドワードさんが居なくなっている事をおそれてる自分から出たもであるのは否定しない。


伝えておきたい。
世界に、彼と彼の弟しかいないわけでもなく、彼とぼくしかいないわけでもない。
彼の長い旅の間、彼を支えてくれた人々がいたように
この世界にも彼を思う人々が非力ながらもいるのだと。


ねぇ、利用されてよ。
貴方が生きてくれれば、ぼくが生きた証になる。

――――ぼくがこんなにもエゴイストだと知らしめたのは貴方なのだから。


汽車が動きだす。
車輪を連動させて、くるくると弧を描きながら、前へとすすむ。
ぼくはもうその輪の中には入れない。


これから先、本当に一人で進まなければならないのはぼくの方だ。














to be continued




          


            Next予告: メビウス リング クロスロード DEPARTURES・4
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テーマ:鋼の錬金術師 - ジャンル:アニメ・コミック

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